歯周病治療─ 「歯茎から出血する」「口臭が気になる」と感じたら ─
歯周病の進行
歯周病を放置するとどうなるのか?
歯周病は歯だけの病気ではありません。歯周病の歯は多量の細菌の巣になっています。その歯で噛むたびに歯茎の血管内に歯周病菌は体内に侵入していきます。その歯周病の原因菌は全身の病気(糖尿病、認知症、心筋梗塞、脳梗塞、腎不全、関節リウマチ、流産、骨粗しょう症など)を引き起こす可能性があることが判明しています。重度になればなるほど、そのリスクは高くなり、多臓器にあらゆる病気を引き起こす可能性が上昇します。
歯周病は家族単位でのケアが重要です!
1990年代、歯周病はお口の中の細菌が原因で起こると言われていました。歯を磨けば歯周病を予防できると、小さい頃から教えてもらっている人も少なくありません。しかし、様々な研究により、細菌だけが歯周病の原因となるわけではないことが判明しています。歯周病の原因は、喫煙やアルコール、全身疾患との関係、飲んでいる薬の副作用、ストレス、歯軋り、歯並びなどが関わっています。その中でも一番影響があるのは、両親からの遺伝や、歯周病菌の家族内感染です。家族の中で重度歯周病をもつ患者さんがいれば、その周囲の家族は重度歯周病のリスクが高い可能性があります。歯周病の管理は、患者さんだけでなく、家族全員が行ったほうがよいでしょう。
なぜ歯磨きしているのに、歯が悪くなるの?
むし歯や歯周病という病気にかかってしまうのにはいくつかの理由があります。
- ・生活習慣の乱れ、生活習慣病などの全身的な病気
- ・炭水化物や糖質の多量摂取などの食事の不摂生
- ・唾液の質・量
- ・口の中の存在する細菌が歯の表面に作り出すバイオフィルの存在
- ・八重歯や親知らずなどの不正な歯並びの存在
- ・細かい部分の歯磨き不足 など
書き出すとまだまだありますが、最も原因となる要因は、唾液の質と歯の表面に存在するバイオフィルムなのです!
バイオフィルムとは?
簡単に説明すると、プラーク(細菌の塊)です。よく例えて説明するのが、お風呂の排水溝にある黒色のネバネバしたものです。バイオフィルムやプラークはよくテレビや雑誌で磨き残しと言われているものがこれになります。しかしプラーク=バイオフィルムではありません。
バイオフィルムは歯の表面に付いた細菌が作り出す透明の膜です。一方でプラークは食事のカスが溜まっただけのものです。プラークは唾液が洗い流してくれます。しかし、バイオフィルムは細菌が固まって歯にひっついているものなので、唾液が洗い流すことはありません。
バイオフィルムは専用の機械で除去していくしか方法がないのです。
- そこで、活躍するのが私たち『歯科衛生士』です!
予防の専門家が機械で歯の表面を清掃します。専門の機械で清掃することを『PMTC』といいます。 - PMTCとは専用の機械で歯の表面、歯と歯茎のキワ、歯と歯の間をクリーニングすることです。一般的に「歯のクリーニング」と呼んでいます。
バイオフィルムを放置しておくとどうなるのか?
バイオフィルムは細菌の塊です。しかも毒性がかなり強い菌です。バイオフィルムに関連したさまざまな病気の原因につながります。
- 歯の病気
- ・むし歯
- ・歯肉炎・歯周病
- ・根尖性歯周炎(歯の根っこにできる病変)
(顎骨炎、骨髄壊死)
- 全身的な病気
- ・糖尿病の重症化
- ・心疾患の併発
- ・早期流産・低体重児出産
- ・誤嚥性肺炎の発生
- ・脳血管障害リスク増大
- ・関節リウマチ発症リスク増大
- ・糸球体腎炎(腎臓の慢性炎症)の発症 など
病気にならないために
ひと昔前は「歯は削ったら治る」「むし歯で人は死なない」「歯がなくなったら入れ歯を」なんて話がよくあったそうです。しかし、近年「むし歯原因菌・歯周病菌が全身的病気に関係し、場合によっては死に直結する」ということがわかっています。病気にならないためにバイオフィルムを取り、歯だけでなく、全身の健康をみなさん自ら守っていきましょう。
当院では歯周病を数値化し15年後の歯周病の状態をAI分析するソフト「OHIS」を導入しています。
再治療にならないために
歯周病・むし歯は生活習慣の悪化からくるものです。いったん治療が終了しても、ちょっとした油断で再発し、再治療が必要になってしまいます。そのような事態にならないように最も大切なことは、毎日の歯のセルフケアはもちろんのこと、3ヶ月から半年に1度の歯科医院でのメインテナンスが必須です。磨き残しのチェックや、歯ブラシの届かない歯周ポケットの中から細菌を除去してもらいましょう。問題が起こってから歯科医院を受診するのではなく、問題が起こらないように歯科医院を利用してください。